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作り手のことば「シンプルな形からやわらかな雰囲気を持つ器へと変化した時が喜びの瞬間」広末裕子さん
2023年10月13日

by 煎茶堂東京編集部
色鮮やかな南島焼、シンプルで美しい砥部焼の窯元での修行経験を経て、現在は南阿蘇村にアトリエを構える広末裕子さん。花びらのような縁の器や、小花のモチーフをあしらったものなど、心なごむデザインが印象に残ります。
今回は、煎茶堂東京でのお取り扱いに伴い、広末さんにお話を伺いしました。
広末さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、器を作ることになったきっかけを教えてください。
ずいぶん前のことですが、友人宅の夕食に招かれた時に、食卓に並んだ全ての器が友人が作ったものだったんです。それはとても温かみのある素敵な器で、その日の夕食は特別な時間に思えました。その経験から手作りの器に興味を持ち、自分でも作るようになりました。
作品を作る工程の中で、好きな工程と理由を教えてください。
好きな工程は、装飾をする時です。それまでシンプルな形やデザインだったものが、そこで手を加えることによって印象が大きく変わります。やわらかな雰囲気を持つ可愛い器へと変化した時に、喜びややりがいを感じます。
広末さんの作品は、花びらのような縁の器や、小花のモチーフをあしらったものなど、心なごむようなデザインが印象に残ります。花や植物への思い入れや、作品に落とし込むきっかけをお聞かせください。
私の作品は身近な村の風景からヒントを得たものが多いです。現在の制作の拠点である南阿蘇村には、暖かい季節には沢山の花が咲いています。
作品には、青い空をイメージしたブルーの器や水源をイメージしたグリーンの器、村のシンボルでもあるオオルリシジミという蝶をイメージしてブルーの蝶をあしらった器などもあって。作品を通じて、南阿蘇村ののどかな風景を感じとっていただけたらうれしいですね。
今回取り扱う「カップ」と「ソーサー」は、つやのある表面と、つぼみのようなフォルムが魅力的です。それぞれのおすすめの使い方を教えてください。
食後などにお茶やコーヒーを飲む時にはセットで使って、いつもよりゆったりとした時間を楽しんでもらえたら。お茶とお菓子をいただく時には、別々にしても使いやすいですよ。
作品を作るときのインプットはありますか?
昔から好きで集めているレースの布や可愛い生地と、自宅の庭や南阿蘇にある風景からヒントを得ながら組み合わせてデザインを考えています。
器を作る上で一番大事なことは何だと思いますか?
「使う」ということです。なので、日常食器というラインは越えないようにしています。例えばカップなら、口元のカットの幅や切込みの深さを実際に使って試しながら決めています。
そして、もうひとつ自分が大切にしていることは、機械化で量産するには難しい、手作りならではのデザインですね。手数が多かったりと一度に沢山は作れませんが、手作りならではの優しさを感じ取っていただけると思います。
今後挑戦してみたいことはありますか?
実は、日々思いついたことを書き留めているデザイン画が沢山あるんです。
新しいモチーフのものや今あるデザインの新しい形、あと可愛いデザインの照明など…。それらを少しずつ作品にしていけたら。今は子育て中心の生活で制作時間が限られていますが、これから生活環境も変わっていくと思うので、いつか全てを形にしたいです。