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作り手のことば「作品に生命をこめるような気持ちで作る」藤村佳澄さんインタビュー
2023年09月15日

by 煎茶堂東京編集部
岐阜県多治見市を拠点に作陶をする藤村佳澄(ふじむら・かすみ)さん。滑らかで光沢感のある佇まいの中にどこか遊び心を感じる器は、食事におやつに、つい手に取ってしまう魅力があります。
今回は、煎茶堂東京でのお取り扱いに伴い、藤村さんにお話を伺いしました。
藤村さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、器を作ることになったきっかけを教えてください。
子どもの頃はバスケットボールに夢中で、12年間続けていました。長く続けたことでキャプテンまで任せてもらえて。その経験から、継続は力なりという言葉を実感して、仕事も長く続けられるものを選びたいとおぼろげながら思っていました。
その後、美大に進学してデザインを学んでいたのですが、バスケットの次にハマる感覚がありました。これは一生続けられるかもしれないと。そこから少しずつ、何かのデザインを考えたり、もの作りをしていきたいと考えるようになりました。
就職に悩んでいた時に、よく通っていたカフェギャラリーで陶芸家とガラス作家の展示を見て、こういう生き方もあるのだなと知りました。器には、誰かの生活に馴染み、ふとした時に嬉しい気持ちにさせることができる、そんな力があるんだなと…。
私もそのような仕事をしたいと思い、器を作り始めました。
作品を作る工程の中で、好きな工程と理由を教えてください。
電動ロクロを使って、柔らかくきめ細やかな土で作品を成形している時です。作品1つ1つに対して、生命をこめるような気持ちで形作っています。私の器を使って料理をしたり、ごはんを食べたり、お茶を飲んだり、お酒を呑んだりする瞬間に、少しでも心が和らぎ、ホッとするような感覚になっていただけたらいいなと思います。
藤村さんの器は、和と洋の両方のエッセンスを感じ取ることができます。これは、藤村さんがこれまでに影響を受けたものが反映されているのでしょうか?
父が海外出張の多い仕事をしていて、世界各国のお土産に触れることがありました。
例えば、アメリカのカラフルでキュートなキャラクターが描かれた鉛筆、エジプトのキラキラした金属のアクセサリーや多彩な装飾が施された独特なフォルムの香水瓶、ドイツの愛くるしいぬいぐるみのキーホルダー、サウジアラビアのとてもかたいガムなど(笑)。
いろんなお土産を通して、世界の文化に触れた経験が器にも現れている気がします。
日本の機能的で使いやすく親切なものづくりは、世界中でも誇れるものだと思います。そんなスピリッツを大切にしながら、多様化する食文化を広く受け入れる器でありたいと思っています。
今回取り扱う「カヌレ茶杯」は、そのまま使っても、ソーサーの上で逆さにしたときの佇まいも可愛らしいです。特徴的な形が生み出された背景をお聞かせください。
カヌレ茶杯は、最初はお花のような形のぐい呑みを作るつもりだったのですが、出来上がったものを見ているとカヌレに形が似ているなぁと思い、どんどん寄せていきました。
それから、カヌレを食べるときはお茶を合わせることが多いかなとも思ったので、器のメインの用途をお茶用として打ち出し、「カヌレ茶杯」と名付けることにしました。
もう1点の「ティーポット」は、ふっくらとしたフォルムと波打つような質感が独特の表情をもっています。
茶道具に、「茶入」という抹茶を入れる容器があるのですが、そこから着想を得てティーポットをデザインしました。少し日本っぽさを取り入れたかったことと、茶入のフォルムがかわいいなと思って、今のような形に落とし込みました。
「器をこんな風に使ってほしい」というシーンや、組み合わせるのにおすすめの食材などはありますか?
カヌレ茶杯は、お茶はもちろん、日本酒用にぐい呑みとしても使えます。Instagramでは、ジャムを入れたり、デザート用として可愛らしく使っていただいているのをお見かけしたことも。
ソーサーは、そのまま器を置くのはもちろん、豆皿としても使えるんです。小さなお菓子や、お漬物や小さな手まり寿司をのせてもかわいいですよ。
ティーポットは、お気に入りのお茶や紅茶を淹れて、ゆったり過ごす時間にお供できたらうれしいですね。
器を作る上で一番大事なことは何だと思いますか?
器を使う人や、盛り付ける料理や飲み物のことについて考えることでしょうか。あくまでも、料理や飲み物が主役で、器はそれらが引き立つような、穏やかな存在でありたいと思っています。
今後挑戦してみたいことはありますか?
まずは今まで通りの仕事を続けていくこと。さらに、様々な国の文化や人にも興味があるので、海外でも販売し、可能なら現地にも行って、様々な食事・文化・人・建物などを実際に知ることができたらいいなと思っています。