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作り手のことば「器を通じて、使う人が生活を楽しむ手伝いを」はなクラフト・ハラコウイチさんインタビュー
2023年05月12日
by 煎茶堂東京編集部
茨城県の海沿いで、陶磁の器や小物の工房を営む「はなクラフト」。器を通じて、使う人が生活を楽しむ手伝いがしたい、という思いのもと、夫婦2人で日々作陶しています。
代表のハラコウイチさんは主に陶器の制作を担当し、奥様の中村佐和子(なかむら・さわこ)さんは磁器の制作と絵付けが専門。今回は、煎茶堂東京での陶器のお取り扱いに伴い、ハラさんにお話を伺いしました。
ハラさん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、器を作ることになったきっかけを教えてください。
もともとはCDショップで働いていて、陶芸とはまったく違う世界にいたんです。
でも、20代の頃に勤めていた会社が倒産してしまって。ほかの仕事を探していたとき、当時はまだ結婚前だった妻が焼き物の訓練校に行くと話していて、面白そうだと思い一緒に行くことにしました。
それまでも陶芸教室に通って土に触れてはいたのですが、本格的にやり始めたのは窯業訓練校がきっかけです。
作品を作る工程の中で、好きな工程と理由を教えてください。
とにかく形を作る作業が好きです。ろくろ成形、板状の土を使い形を作るたたら作り、手びねり……何でも楽しいですね。
成形と削り作業が終わった後に素焼きする前の状態が一番好きで、極端に言ってしまえば、窯で焼成が終わり、完成した状態のものにはあまり興味はないのかもしれません。それくらい、成形にかける思いが強いです。
ぽってりとして手になじむような器は、食事とおやつ、どちらを盛りつけても映えそうです。フォルムや色味のこだわりを教えてください。
ぽってりとしたという感想は初めて言われたので新鮮です。
実は、新しいアイテムのデザインをデッサンなどで紙に描いて起こすことが苦手なんです。だから、普段は自分が使いたい、もしくは作りたい形を頭の中で想像し、それに近づけるよう試作を繰り返しています。
今回取り扱う「八角皿」「輪花皿」は、多彩な表情をもつような貫入(釉薬の表面にできた亀裂のような模様)が印象的です。これは、どのようにして作られるのでしょうか。
陶器では、焼成後に数日かけてゆっくりと貫入が入っていきます。その貫入が入った器に装飾と汚れ止めのために墨を塗り、余分な墨を拭いて除くことで貫入に墨が入り、模様になって現れていきます。
できあがるまでに苦労したことはありますか?
貫入の表情はコントロールが出来ません。
同じ窯を使い、以前と同じ温度・時間で焼成しても、器の厚さ、釉薬の濃さ、窯内での場所など、ちょっとした条件の違いで全く違う表情になってしまうことが度々あるので難しいですね。
たまにお客様で以前のご購入品とまったく同じものが欲しい、と言われる方がいらっしゃるのですが、こういった理由を説明して諦めていただいています(笑)。
工業製品とは違う、手工芸品ならではの趣きとして楽しんでもらえるとうれしいですね。
作品を作るときのインプットはありますか?
特に意識していることはないのですが、強いて言えば音楽でしょうか。
初めにお話ししたように、CDショップで働いていたくらいの音楽好きなので、仕事場ではジャンルや新旧にこだわらず、その時に聞きたい音を一日中流しています。
あとは適度な運動もかねて無心に庭の草むしりをするのも、良い気分転換になっていますね(笑)。
器を作る上で一番大事なことは何だと思いますか?
楽しんで作る事ですかね。手作りなので制作時の気分が反映される気がしていて。
嫌々制作していると、何かが違う器に仕上がってしまうので、自分の気持ちを整えることも大切にしています。
今後挑戦してみたいことはありますか?
現在は陶器が中心ですが、以前作っていた磁器の方にも制作の幅を広げていきたいです。