緑茶をワイングラスで楽しむ。美味しさの秘密と香りや味わいを引き出すコツは?
2020年06月25日
食べ物や飲み物は、環境によって味わいが大きく変わります。特に日本茶をはじめとする飲み物は、グラスを変えるだけでもガラリと変わる、なんてことも。では、どんなグラスで楽しむと良いのでしょうか。 今回ご紹介するのは、お茶をワイングラスで楽しむという試み。繊細なワインの魅力を最大限引き出すワイングラスは、お茶の違う一面も引き出してくれるのです。
教えてくれたのは…梁 世柱(ヤン セジュ)さん
日本料理龍吟、Wakiyaにてシェフソムリエを勤めた後、ワイン専門のオンラインサロン「SommeTimes」を創設。日本トップワインプロフェッショナル約50名による“おすすめの1本”コラムを毎日配信。
なぜ面白い?ワイングラスの世界
「ワイングラスで飲むことによって、マグカップで飲むときに比べてより集中して飲むことになると思うんです。」と語る梁さん。茶の味わいは繊細なものなので、飲み手が美味しさを探しにいかないと、伝わりづらい場合があります。
そんなお茶も、ワイングラスで飲むことによって、そのスイッチが入りやすくなるのだとか。たかがグラス、と思わずに試してみることで今まで知らなかった五感の広がりを感じることができるかもしれません。
ワイングラスの形は、香りと味わいを深めてくれる
ワイングラスの形は、香りと味に影響します。その仕組みを理解したグラス選びをすれば、ドリンクのポテンシャルを最大限引き出すことができるのです。
香りは「グラスの総面積」と「香りをとじこめる力」で決まる
香りは主に2つのポイントをおさえることで強弱を操ることができます。もとの香りが強いものは立たせすぎず、弱いものは閉じ込めて香らせたりしてバランスをとります。ではグラスの形のどのようなところに注目すれば良いのでしょうか。
ひとつめは「グラス内壁の総面積」です。香りは、液体の表面積が広いほど強くなります。ワイングラスはグラスを揺らし内壁に液体を付けることで香りが揮発するようにできており、大きいグラスほど揮発する量が増えていきます。
ふたつめは「香りをとじこめる力」。飲み口の広がり方でも、香りの強さは変わってきます。卵型グラスのように飲み口がすぼまっていると香りを閉じ込める力が強く、逆に末広がりタイプのものは、香りが逃げやすくなります。
グラスの形で、「味の感じかた」も変わる
舌は場所によって感じる味覚が違うのをご存知でしょうか?舌の手前は甘味を、奥は苦味や旨味を感じやすいようにできています。そして、最初に感じた味を最も強く感じるのです。ワイングラスの形によって液体の入りかたが変化すると、同じドリンクでも味わいが変化するのはそのため。
味わいに影響するグラスの形として、チェックしておきたいのは「カーブ」と「飲み口の広さ」のふたつ。
赤ワイングラスのようにカーブが大きいグラスは、液体が緩やかに流れ舌の尖端に当たります。逆にカーブがないと液体が口に入るスピードが早く、渋味を感じる奥に当たるのです。
また、狭い飲み口のグラスは大きく傾けないと口に入らないため、液が舌の中心を早く細長く流れます。広いグラスは幅広くゆったりと入り、舌の尖端から全体に味わいが広がります。
ワイングラスでお茶を楽しむ
では、ワイングラスの特徴を生かしてお茶を飲むにはどのようにしたら良いのでしょうか?
まず気にしたいのが、お茶の温度。湯呑と違い、手に温度が伝わらず火傷の危険があるため、ワイングラスに高温のお茶を淹れるのは避けて。またグラスに入れることによって温度もあっというまに落ちてしまいます。梁さんがおすすめするのは、冷茶だそうです。
使うワイングラスは、シャンパングラスや白ワイングラスがおすすめ。グラスが大きいと繊細な茶の味がぼやけてしまいます。低温で甘味を抽出したお茶はゆるいカーブのグラスを、渋味や旨味のお茶はシャンパンフルートを使うと良いでしょう。卵型グラスなら一番膨らんでいる部分の少し下まで。シャンパンフルートは少し上を意識して注いであげてください。
ワインソムリエの考えるティーペアリング
美味しいお茶が入ったら、ぜひお茶請けと一緒に楽しみたいもの。では、どんな食べ物が合うのでしょうか。
攻めるべきは、ワインにできないお茶らしいペアリングだと語る梁さん。ポイントは「風味」をリンクさせること。
ほうじ茶のロースト感にはスモークしたもの、玄米茶の香ばしさには揚げ物などを合わせるのだとか。お茶から感じる風味をワイングラスで引き立てつつ、シンプルな料理や繊細な和食を合わせることで料理の感動がより広がります。
ワイングラスで楽しむ緑茶の淹れかたと、おすすめのペアリングもぜひ参考にしてみてください。
グラスとのかけあわせで、お茶の味わいは無限大に広がります。ワイングラスの特徴を生かして、ぜひより深いお茶の楽しみを見つけてみてください。