一本のチャノキからできる新茶の量

一本のチャノキからとれる新茶はおよそ40g。*1

TOKYO TEA JOURNAL VOL.1 収録

果たしてこれが多いのか、少ないのか?お茶の販売はよく100g入ったパッケージで売られているわけだから、1袋にチャノキ2〜3本分の茶葉が入っている計算になる。いや、それだけでもすごいとしか言いようがない。

 

「りんごの木3本分の果実を使っています!」なんていうりんごジュースなんかがあったらとんでもない贅沢なのではないだろうか。私たちのレシピでは、一回の抽出に4gを使うようにしているので、1杯で10分の1本のチャノキをいただいていることになる。これまで明確にイメージしたことがなかったけれど、1杯の重みが違ってくる。「あっ、1gこぼしてしまった。」というときは「0.025本分のチャノキが・・・!」なんてことになるわけだが、これ以上書くと、恐れ多くて飲めない人もでてくるだろうから、茶葉の消費量が冷え込んでしまってはよくない。やめておこう。

 

さて、また別の角度から新茶について考えてみたい。新茶とはそもそもなんなのだろう。新茶は1年に一回の収穫しかない。一般的に、その年の最初にでてくる新芽で作る煎茶のことを新茶と呼んでいる。チャノキが冬眠して冬を越す間にも栄養を溜め込み、春になってその栄養を使って芽を出すわけだ。その分の栄養素を含んでいる新芽で作る煎茶は特別美味しいものが作れるというわけで日本人は江戸時代からこれを重宝してきた。

 

農家は1年という時間を、新茶のために肥培管理といって畑の状態を管理して1年間を過ごす。肥料をやったり、害虫の防除をしたり、スタイルは様々あるけれど、どの農家も良い茶作りをするというゴールは変わらない。良い葉を作るということは、根から吸収する栄養素と光合成の2つの要素によって成り立ち、究極的には土壌の管理と日照の管理に尽きる。雨が降っても降らなくても、土壌の水分量が代わり、微生物の環境は変化していく。肥料をやってもすぐに雨が降れば流されてしまう。台風が来れば塩を含んだ風が吹き、塩害に見舞われる。4月の寒の戻りがあれば、明け方に霜が降りて霜害にあう。収穫日になって雨が降れば収穫ができず、摘採の日を逃す。そうなってしまえば全部が水泡に帰す。そんなハードな局面を乗り越えて迎える新茶の収穫の日なのだ。

 

いやしかし、まだここでは終わらない。煎茶は、生の葉で収穫しただけでは終わらない。野菜や果物とは違って、生の葉では出荷できないのだ。生の葉を収穫してからが長い!蒸して揉んで(揉む工程の長いこと長いこと)、不要な部分を取り除き、焙煎して、小分けしてやっと完成する。なんでこんな大変なことやってるの?というほど、割に合わない長旅。好きじゃなきゃやってられないというのがお茶のロマンのあるところだ。・・・けれども、ロマンで飯は食っていけないのである。ペットボトルの需要が茶業を下支えしているけれども、ペットボトルに使われるのはほとんどが二番茶、三番茶を始めとした低価格帯の茶葉。みんなが新茶を飲まなくなってしまったら、新茶の買い手がつかなくなり、失われていく。先程触れた、土壌を良くして日照を管理するのは、ひとえに新茶の「旨味」と「香り」の栄養素のためなのだ。

 

大変な長旅を終えて手元にやってくる新茶に対して、受け手が少しでもいいから意識を向けて、きちんと受け取る関係が作れたらどんな報われる農家がいることか。農家が1年かけて取り組んだチャレンジの結晶を、発信しているシグナルを、受信する人がいてくれたら、と。それをするのが私たちの役目だとも感じている。

 

八十八夜とは立春から数えて88日目にあたる日のことで、お茶の収穫はこの時期に行うのが良いというのが言われてきた。実際は温暖な南の方から各地それぞれの茶時期を迎えるわけだけど、みなさんには八十八夜の頃になったら今年の新茶は・・・と収穫を祝い、ぜひ味わってみて欲しい。

 

*1…10aあたり生葉収量(kg)主産県計÷10a当たり苗木本数×荒茶歩留まり率×出物選別率 (参照:農林水産統計)   当然、個別の畑や作り方によって変動する数字。

<TOKYO TEA JOURNAL本誌でお楽しみください>


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TOKYO TEA JOURNAL
500円(税込)

TOKYO TEA JOURNAL VOL.1 八十八夜 新茶 編集部

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